春の対談|中小路 宗利さん

春の対談 御田植え祭

【写真】中小路宗俊(長岡天幡宮 宮司)

中小路 宗俊

長岡天満宮 宮司

1958年、京都府に生まれる。
2011年に、先代の後を受け宮司に。
中小路家は菅原道真に仕えてきた
系譜のひとつにあたる。

【写真】山本雄吉(株式会社小倉山荘 代表取締役)

山本 雄吉

株式会社小倉山荘 代表取締役

1951年2月生まれ。
1951年に先代・山本國造が生菓子の製造販売『山本製菓舖』を創業。
以後、おかき・おせんべいの製造・加工・販売を手掛ける「長岡京 小倉山荘」を設立。現在に至る。

伝統文化は、人の心と時によって磨かれる。

私たちの暮らしの中には、さまざまな行事があります。

それらの行事の中には、古くから伝承されてきたものも少なくありません。

伝統文化とは、ただ単に形式をまねたからといって受け継がれていくものではなく、

ともすれば、なおざりにされてしまう「慈しみの心」や「人を思いやるやさしさ」というものを、

私たちも自身の心を磨くことで育んでいきたいですね。

自然に学び感謝する、それがお米づくり

御田植え祭イメージ

山本私共が提供している米菓のより安心・安全な製品づくりのベースは、お米づくりにあります。食べ物を扱う企業として「食への感謝の気持ちを持って商品を提供していきたい」、それがよりよい商品づくりに繋がればとの想いからお米づくりをはじめました。

中小路確かに安心・安全な商品づくりの根本は、食への感謝の気持ちを持つことでしょうね。かつて日本人にとって稲作は、生きていく上での拠り所。光・水・風といった自然の恵みによって生きる糧を得て暮らしてきたところから、米づくりを通して自然に対する信仰も生まれたのです。

山本先人たちはその多様な自然の恵みに感謝し、良き日本の文化をつくりあげてきた。私たちは生きていく上で、他の動植物の命を頂戴し命をつないでいます。食す、食されるといった関係ではなく、お互いに命を授け合う関係なのです。そう考えると、もっと生き方に責任を持って暮らすべきだと思います。

中小路そうですね。人間も自然の一部であり、生きとし生けるものはすべて、食物連鎖でつながっています。私たち人間は、自然に学び、太陽や大地に感謝の念を捧げてきました。その心を次の世代に継承していくことが大切だと思います。

地球環境に配慮した生きものいっぱいの田んぼ

御田植え祭イメージ

山本小倉山荘としてのコンセプトは「百人一首」ですが、製品コンセプトは「生きものいっぱい田んぼのお米」です。安心・安全な米づくりを実現するために、休耕田の活用を図ることで、二酸化炭素の吸収や酸素の発生を促し、農薬の使用を最低限に抑えた減農薬農法を行うなど、自然が持つ循環機能を活かすことにより、環境との調和に配慮しながら稲作をしてます。また、稲刈り後の冬の水田に水を張り、糠を撒いて肥沃な土づくりを行う「冬期湛水」という農法も、管理しているすべての田んぼではじめました。微生物やイトミミズなどが生息可能な状態にし、田んぼの生物多様性を高める努力をしています。

中小路より多くの様々な生き物が集まってくる環境の中でお米づくりができるということですね。自然の力を活かしてバランスを取りながら、環境にやさしい形で稲作に取り組んでおられることは、とても素晴らしいと思います。

山本農薬の使用を最低限に抑えてますから、病気にかかりにくい強い苗を育てるために左右交互にローラーをかけ、わざと苗を倒します。苗は倒すと起き上がろうとする自然治癒力があり、さらに茎が太く、強い苗が育つのです。このような農法で、生き物いっぱいの安心な環境づくりを推進しています。

中小路私たち人間はインフラを整備し、物質的な豊かさを手に入れましたが、逆にその弊害も生まれています。地球温暖化やオゾン層破壊など、環境問題は年々、深刻化していますよね。

山本21世紀は地球への負荷を見直し、資源の有効活用を考え、循環型社会を目指していくべきと考えます。
「唯足知吉」(ただ足るを知って吉となす)小倉山荘竹生の郷のつくばいに刻まれた言葉が語るのは、ささやかな幸せに気づき、大切にする奥ゆかしさです。私たちが目指す心のあり方を示しているのです。

御田植え祭は、感謝の心を育む共生の輪づくり

御田植え祭イメージ

山本お米は米菓加工用としてつくっているのですが、単に米づくりに終始するのではなく、もっと地域の人々やお客様にも、地球環境や資源について共生の輪を拡げていけたらと思案していたわけです。その結果、豊穣祈願の行事でもあると共に感謝の気持ちを表す神事の御田植え祭をやってみようということになったのです。

中小路収穫には、感謝という気持ちが込められています。だから収穫したものを神様にお供えしてきたのです。
ここで御田植え祭の手順について、少しお話をさせていただきます。まず御神田の前に祭壇をつくり、お供え物を差し上げて田んぼの四方祓いを行い、祝詞(のりと)をあげます。その際、祓い清めるために切麻(きりぬさ)という細かい麻入りの紙片を3回ほど撒き、その後に玉串拝礼を行い、最後に直会(なおらい)といって、出席者一同で御神酒を頂戴します。そして、早乙女による御田植えが始まるわけです。

山本早乙女役には、新入社員を中心に参加してもらっています。お米づくりの難しさ、自然への感謝の気持ちを体感することができ、ひいては当社の理念や考え方を理解してもらうためです。今年で5回目になりますが、神事としてやっているので、毎年凛とした気持ちになりますね。

中小路日頃から神様や自然に感謝し、あらゆるものを大切に思う慈愛の心を持つことが情操を育てるのでしょうね。私は祝詞を奏上しますが、神への信奉心を誓い、自然の恵みを授かりながら生きていけることへの感謝を神様にお伝えしているのです。
稲作は、自然と上手く折り合っていくための知恵を私たちに授けてくれます。その知恵に学びながら、人と人、人と自然との絆を蘇らせていくことは、大切なこと。どうか、これからも御田植え祭を継続していただければと思います。

山本もちろん、そのつもりです。ものごとは、一朝一夕にはなりません。原材料となるお米づくりに自然のあり方を見つめ直す良い機会となりました。この活動を終らせることなく、さらに広めていくことが、私たちの棲みかである地球への恩返しであると考えています。

<夏号へつづく>

平成25年春のカタログ

今回の対談は平成25年
春のカタログでも掲載されています。