冬の京歩き|宇治川

宇治川~川霧と網代木(かわぎりとあじろき)~

 宇治川:メインイメージ

静かに明けていく空、霧がかかる川面…
冬の朝の情景を表した、
小倉百人一首第六十四番。
今回は、この歌に詠まれた宇治川をご紹介します。

権中納言定頼

朝ぼらけ宇治の川霧たえだえに
あらはれわたる瀬々の網代木

「明け方、あたりが徐々に明るくなってくる頃、宇治川の川面にかかる朝霧も薄らいできた。
その霧が切れてきたところから現れてきたのが、川瀬に打ち込まれた網代木(あじろき)だよ」


宇治川の美しさを見事に表現した和歌を残すなど、優れた才能を発揮。

権中納言定頼(藤原定頼)は、詩歌管絃の
名手だった大納言公任の長男であり、中古三十六歌仙の一人です。
和泉式部の娘・小式部内侍(こしきぶのないし)をからかい、
百人一首第六十番の歌でやりこめられるという、軽薄なところもあったようですが、書や管絃に秀でた趣味人として知られています。

宇治川

宇治川

宇治川

平安貴族の心をとらえた、 自然が生み出す冬景色

京都の南部にある宇治は、平安時代、貴族の別業(別荘地)でした。この地で古くから人々を惹きっけてきたのが、四季移ろう宇治川の風景。その一つが、第六十四番で詠まれた、冬の美しい情景です。凛とした空気に包まれた朝、空が明るくなるにっれて川面にかかる霧(川霧)も薄らいでいく…霧が晴れていくと川瀬に現れるのは、網代木(あじろぎ)。網代木は、冬に琵琶湖から宇治川へと流れてくる小鮎の稚魚・氷魚を捕るため、竹などで編まれた網代を仕掛ける杭のことです。川霧(かわぎり)が晴れるのとは対照的に、いくつもの網代木が川に並ぶ光景は、平安貴族たちの心をとらえたことでしょう。それは、「源氏物語」の宇治十帖や様々な和歌にも歌われた、冬の風物詩。時代の流れで網代木(あじろぎ)を見ることはできませんが、寒さ厳しい早朝にこの川を訪れてみれば、川霧がつくり出す幻想的な世界と出会えるかもしれません。

宇治川 地図

最寄駅
JR奈良線「宇治」駅、京阪宇治線「宇治」駅

宇治ゆかりの人物

平安時代の権力者・藤原道長の息子、藤原頼通。
彼が父親から受け継ぎ、仏寺として改めた場所が
宇治の平等院鳳凰堂です。
歌人としても名を馳せ、第六十四番の詠み人・定頼とも親交がありました。
宇治殿とも呼ばれた頼通は、栄華を極め、この地で生涯を終えます。