一期一会
平成25年 秋
秋の対談 抜き穂祭
稲穂にまなぶ、
「ありがとう」。
大地も、人も、つながっている。
田んぼも、生き物も、
つながっている。
地球がつながりをむすんでいる。
太陽に、雨に、風に、生き物に、
人に、地球に、
そして今日にありがとう。
わたしたちの願いは、たくさんの
「ありがとう」をむすぶこと
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中小路 宗俊
- 長岡天満宮 宮司
1958年、京都府に生まれる。
2011年に、先代の後を受け宮司に。
中小路家は菅原道真に仕えてきた系譜のひとつにあたる。 -
山本 雄吉
- 株式会社小倉山荘
1951年2月生まれ。
1951年に先代・山本國造が生菓子の製造販売『山本製菓舖』を創業。
以後、おかき・おせんべいの製造・加工・販売を手掛ける「長岡京 小倉山荘」を設立。現在に至る - 株式会社小倉山荘
稲穂のこころは、生かされていることへの感謝のこころ
- 山本
- 私共では、6月に御田植え祭で植えられた稲を刈り取る神事「抜き穂祭」を9月下旬頃に執り行います。収穫に感謝する神事ですが、わずか4~5ヶ月で稲が実を結ぶ、その成長力には驚くばかりです。稲の生命力の凄さもそうですが、私たちの生命の根幹を担ってくれているお米への感謝心も同時に湧いてきます。
- 中小路
- そもそも「抜き穂祭」は、天地自然への感謝の神事なのです。ですから祝詞では神様への信奉心を誓い、自然の恵みを戴きながら生きていけることへの感謝をお伝えしています。
- 山本
- 「実るほど頭を垂れる稲穂かな」と言われますが、稲は太陽の光や雨水など、大自然の悠久の恵みを受けて成長し、実を結んでいきます。そして、実るほどにその穂先を下げ、豊かな大自然の恵みとして、私たちの生命に潤いとやすらぎを与えてくれています。その姿は自然の恵みに感謝し、仲間を尊びながら、力を合わせて稲を作り続けてきた、先人のこころでもあるように思います。
- 中小路
- 私たち人間は、「稲穂のこころ」の在り方に学び、成長するほどに人や自然に感謝をし、いつも明るく素直に、そしてあたたかい気持ちと謙虚さを忘れずに社会に貢献していくことが、とても大事だと思います。
「いただきます」と「ご馳走さま」
- 山本
- 私たちは、日常的に食前に「いただきます」と言い、食後に「ごちそうさま」と言います。この言葉の根底には、私たちが生きていく上で大切なことが啓示されていると思うのですが…。
- 中小路
- それは、神様にも人にも感謝する気持ちです。日本神話によると、天照大神が皇孫のニニギノミコトに対して稲穂を授けられたお陰で、日本列島に稲作ができるようになったと伝えられています。これを天照大神からの「たべもの」として感謝し、ありがたく「いただきます」と言ったのです。食後の「ごちそうさま」は、昔は食材を集めて料理をつくるということは、大変なことだったのです。ですから、走りまわって料理をつくってくださった人々に感謝をし、「ご馳走さま」といってきたのです。私たちは、目に見えない多くの、あらゆるものの「おかげ」で生かされています。ですから、このことを自覚できると、その「おかげ」をもたらしてくれる元にお返しをしたい気持ちが湧きあがるのが人間です。これが感謝や報恩の実践であり、一番大切で大事にしなければいけない教えなのです。
- 山本
- 私たちは、世の中が便利になり、豊かな生活が当たり前なものとなってきたことで、自分で生きていると錯覚し、普通の日常へのありがたさや報恩する思いを失いがちです。いま一度、周りのすべてのものに生かされていることを、忘れないようにしなければなりませんね。
人と自然との共生のために
- 中小路
- 人間誰もが、平等に天地の恵みをいただいています。そう考えると、自分がいかに恵まれているか、という視点で考えてみるといいかもしれませんね。そして、もっと普段の生き方というものに責任を持って暮らすべきではないでしょうか。
- 山本
- 人間は、過度の開発で生態系のバランスを崩し、環境にひずみを与えています。こうした観点に立ったとき、わが社は、「地球にやさしいものづくり」を目指すべきだと考えました。ですから、「ギフトを通じて、人と人の関係がより豊かになること」はもちろん。「地球環境を守ること」も両立していける未来を、わが社の商いの中心におかなければいけないと思っています。具体的には、人と地球の未来を考えて、原風景である美しい田んぼや里山の姿を甦らせることであり、食べ物への感謝の心を育むことでもあります。そのために自然に負荷をかけない米づくりを推進しています。未来の子供たちに「生きものいっぱい」の地球を伝えていくこと、それが私たちの使命だと考えています。
- 中小路
- 私は、「ありがとう」の気持ちは、世界で一番大切なことだと思います。すべての生き物は、この大自然の恵みによって、その存在を保障され、命を育まれています。米づくりの中で育んできた大いなる知恵や文化を、子供たちにしっかりと引き継いでいかなければなりませんね。
- 山本
- 人と自然との共生の原点であり、自然に感謝し、自然と上手に折り合っていくための知恵を授けてくれる田んぼを舞台に、稲作神事の体験など、人と地球の未来を考える様々な活動を展開してまいります。私たちが、この活動をさらに広めていくことが、小さなことですが私たちの棲みかである地球への恩返しであり、未来の子供たちへの心づくしの贈り物だと考えています。