読み物

わたしたち

2020年 あふれる光に未来への願いを託す


絆をむすぶ小冊子

わたしたち

あふれる光に未来への願いを託す

黄金色に輝き希望を与えてくれるひまわり

今年もいよいよ夏の盛りを迎え、ひまわりの咲く頃となりました。
子どものときから毎年、この季節の訪れをわくわくしながら待っているという方も、きっと多いことでしょう。

家の庭、学校の花壇、川ぞいの畑。さまざまなところで「向日葵」という字にふさわしく、燦々と降りそそぐ日光を浴びて咲くひまわり。
もくもくと入道雲がわきあがる青空をキャンバスに、ひまわりが黄金色に輝くのは夏の盛りだけ。時が過ぎるとひまわりは輝きを失い、その姿を詠んだ歌にこんな一編があります。

向日葵の おほいなる花の そちこちの 弁ぞ朽ちゆく 魂のごとくに
 若山牧水

ひまわりのあちこちの花びらが、まるで魂をもっているように枯れていく。
花が枯れる、その姿は儚いもの。でも、花が散るのは魂があるから。それは移り変わるいのちを生きている証し。そう思うと儚いより、一生懸命に生きるひまわりが愛おしく、頼もしく見える。
やがてすべての花を落とすと、ひまわりは種をつける。そこにあるのは、希望。

来年も、みんなの笑顔がもっと輝くように。そんな想いをこめて、ひまわりを愛でてみませんか。


わたしの歩みものがたり 第9回

長岡京、小倉山荘の社員がふりかえる、今も心にのこる出来事。

第九回は、名古屋松坂屋店・眞弓梓の物語です。

今から5年ほど前の出来事です。多くのお客様がご来店されて行列ができ、皆様に「少々お待ちください」とお声がけをしていました。すると、ある方から「もっとキビキビと動けないの?」とお叱りを受けてしまいました。

「一生懸命にやっているのに、なぜ?」としばらく落ち込み悩みましたが、店長に相談すると、自分の言動をもう一度振り返ってみてはどうかと言われました。
よくよく考えて気づいたことがありました。それは、長い列に並び待たされ、イライラしているであろうお客様の顔を見るのが怖くて、心ない形式的な言葉を発するだけで見て見ぬ振りをしていたのではないかと。

それ以来、わたしは混んでいるときでも慌てることのないように心がけました。
そして、勇気を出してお並びくださっているお客様お一人お一人の目を見て、「本日もご来店ありがとうございます」「大変お待たせをしておております。少々お待ちくださいませ」「お疲れではないですか。大丈夫ですか」と、状況に合わせてお声がけをするようにしました。

すると、皆様笑顔を返してくださったのです。数日後、お客様から「とても素敵な対応でしたね」とお褒めのお葉書をいただいたのは予想外で、喜びもひとしおでした。

そのとき、イソップ物語の『太陽と北風』のことがふと頭に浮かびました。
北風と太陽、どちらが強いか。北風は思いきり強く風を吹きつけますが、旅人は寒さに震えてマントを体に巻きつけるだけ。一方、太陽は旅人を優しく照らし、少しずつ暖かくしていくと旅人は気分がよくなり、そのうちポカポカしてきてマントを脱ぎます。

自分には、勇気が少し足りなかったことに改めて気づかされました。
そして、想いやりの心で相手を心地よくしてあげるように努めれば、
その喜びは自分に帰ってくる。
優しい言葉と笑顔を忘れないように努めれば、幸運の女神が微笑んでくれるはず。
そんなことが身にしみた経験でした。



珠玉の歌に詠われた、人が人を想う気持ち

忘れじの ゆくすゑまでは かたければ 
今日をかぎりの いのちともがな

いつまでも変わらないというあなたの言葉が、遠い将来まで変わらないということは難しいでしょう。ですからいっそこうして会えた、今夜限りの命であってほしいと思います。

平安時代の中ごろに生きた儀同三司母の第五十四番。
これは中関白藤原道隆と結婚したころに詠まれたもので、そのとき、彼女は自分のことを愛してくれる道隆との暮らしに大きな幸せを感じていたといいます。

しかし通い婚が主流で、夫が正妻以外に妻を持つことが珍しくなかった平安時代のこと。今は自分ひとりを愛してくれている道隆が、いつ心変わりするか分かりません。

最愛の人を失うくらいなら、いっそのこと、幸せの絶頂で死んでしまいたい。
それは、幸せがいつまでも続いてほしいという想いの裏返し。
そんな切なる願いが、三十一文字からひしと伝わってきます。


書いて、整心 そっと、一息

一語一会 第9回

言葉の意味を噛みしめながら一文字ひと文字書いてみましょう。

安穏無事

【安穏無事(あんのんぶじ)とは】

穏やかで、安らかなこと。あらためて大切にしたいこと、それは誰もが笑顔で、のどかに過ごせる日常。


もし下を向いたままならば、
虹をけっして見つけることはできないだろう

空を見上げる。ただそれだけで、記憶から消えていた多くのことが心に蘇ってきそうです。
仕事や日常の忙しさに気を取られ、空を見ることを長く忘れてしまってはいませんか。

苦しみや深い悲しみの中で、空を見る気持ちになれない人もいるかもしれません。しかし、生きている限り、空は誰の上にも平等に広がっています。
背筋を真っ直ぐに伸ばし、深く深呼吸をすれば気分が晴れ、果てしなく続く空を眺めていると、疲れた身体と心が癒されていきます。

笑いを通して人間愛を描いた喜劇王、チャップリンの言葉通り、空を見上げることは希望を取りもどし、新しい自分に出逢うことなのかもしれません。
慈雨に洗われた青空の向こうには、七色に輝く明日が待ち受けているのですから。

報恩感謝 主人 山本雄吉